児童虐待を理由に離婚を考える際には、離婚だけでなく、親権や面会交流の問題も発生し、場合によっては刑事事件としての対応が必要になることがあります。特に身体的・心理的虐待は法律上厳しく取り締まられており、逮捕や罰金が科される場合もあります。また、面前DVや激しい夫婦喧嘩も心理的虐待と見なされます。虐待が絡む場合、親権や面会交流に関する争いが予想されるため、弁護士への相談が推奨されます。

夫・妻が子どもを虐待している、子どもに対する言動に問題がある、だから夫・妻と離婚をしたい。

離婚に児童虐待の問題がからむと、離婚するかどうかだけでなく、親権や面会交流の争いも激しくなる場合があります。また、夫・妻が子どもに対する暴行・傷害で立件されるなど、刑事事件の被害者(及びその保護者)としての対応が必要になる場合もあります。

ですから、配偶者による子どもへの虐待を理由に離婚を決意した場合には、離婚だけでなく児童虐待、そして場合によっては刑事事件にも詳しい弁護士の助言を受けて、離婚に向けて準備をしていく必要があります。

身体的虐待で夫・妻が立件されるケースも

児童虐待防止法では、児童虐待を身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4種類に分類しています。

イメージしやすいのが1つ目の身体的虐待でしょう。殴る、蹴る、叩くといった、子どもの身体に外傷が生じたり、外傷が生じるおそれのあるような暴行を加えることをいいます。

昔は、しつけと称して、子どもを叩いたり、殴ったりしたかもしれません。しかしながら、現在、児童虐待に向けられる眼差しは大変厳しいものになっています。

親権者は子どもの人格を尊重することが求められており、体罰その他子どもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動は禁じられております。令和4年の民法改正により、民法821条は、親権を行使するにあたって、子どもの人格の尊重と子どもへの体罰その他有害な言動を禁止することが明記されました。

子どもに対して暴力を振るったことで、逮捕・勾留されるケースや、身柄拘束はされずとも、警察署・検察庁で取調べを受けた上で、略式手続で簡易裁判所において数十万円程度の罰金の納付を命ぜられることがあります。

また、被害者である子どもの保護者として、暴行・傷害等で立件された夫・妻側の弁護人との示談交渉等の対応を迫られることもあります。

激しい夫婦喧嘩も児童虐待に

児童虐待には、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の4種類があると言いましたが、その中で最も多いのが、4つ目の心理的虐待です。子どもを言葉で脅す、無視をする、きょうだい間で差別的な扱いをする、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(面前DV)など、児童に著しい心理的外傷を与える言動のことを指します。

子どもの前で配偶者等に対してDVを行うことは、心理的虐待の一種である「面前DV」に当たるとされているのです。さらに、子どもの前で激しい夫婦喧嘩をすることも、心身に有害な影響を及ぼす言動として「面前DV」となる場合があります。

妻の児童虐待に悩む人も準備が必要

児童虐待をするのが男性とは限りません。

女性側が子どもに対し虐待を行ってきたため、男性側が離婚を決意し、最終的に男性側が子どもの親権者になるケースもあります。

妻の児童虐待に悩むものの、男性側が親権者になるのは難しいと考えて離婚に踏み切れないまま、時間だけが過ぎてしまうケースもあります。

しかし、妻による児童虐待を漫然と見過ごしていると、あとから、妻の児童虐待を容認・黙認していたと評価されてしまう場合があります。

配偶者が子どもに対して虐待を行っており、親権についても争わざるを得ないと考えている場合は、あなたが男性であるか女性であるかを問わず、児童虐待や離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

面会交流を求められるケースも

別居親が子どもを虐待していた場合、子どもが面会により更なる精神的苦痛を受けるおそれがあるとして、面会交流そのものを禁止するといった結論になったり、直接交流は認められず、写真や手紙の送付といった間接交流にとどめたり、第三者機関の利用等を条件にするといった結論になる場合があります。

子どもに対して虐待を行ってきた夫・妻が、子どもとの面会交流を求めることはよくあります。

児童虐待が関係する場合には、離婚や面会交流の代理人としての経験が豊富な弁護士に相談し、手続を進めていくことをおすすめします。