契約書は取引を円滑に進め、紛争を防ぎ、トラブル時に当事者を守る重要な書類です。しかし、ひな形をそのまま使うと、契約の内容が取引に適さず、リスクが高まることがあります。特に、紛争解決のプロである弁護士が作成する契約書は、将来的なトラブル予防に有効です。取引の状況に応じた契約書を作成することで、言った言わないの争いを防ぎ、紛争時の証拠としても強力な役割を果たします。弁護士の助言は安心と信頼のカギです。
契約書には、紛争・トラブルを予防する機能と、取引を円滑に進める機能があります。さらに、紛争・トラブルが起きたときに、自分たちを守る機能もあります。
契約書は、普段の取引においても、トラブルが起きたときにも、契約内容を確認する重要な手掛かりとなります。
契約書がないと、当事者間でどのような合意があったのかが分からなくなります。他方で、契約書があれば、どのような内容の契約をしているのかが明確になり、取引を円滑に進めることができます。
もっとも、契約書があっても、契約書に書かれていない事項については、当事者間で合意していたことを証明するのが難しいです。口ではこのように約束していたけれども、あるいは、担当者レベルではそういう話になっていたけれども、契約書にそのような内容は一切書かれていなかった、ということがよくありますが、契約書に書かれていない事項については、合意があったのかどうかが分かりません。
契約書は、裁判になった場合に、当事者間でどのような内容の契約が結ばれたのかを証明する重要な証拠(書証)となりますし、第三者が契約内容を確認する手掛かりにもなります。
このように、普段の取引を円滑に行うためにも、言った言わないの水掛け論になることを防ぐためにも、そして、トラブルが起きたときに自分たちを守るためにも、きちんとした契約書を作成して取り交わしておくことが重要になります。
契約書の作成を弁護士に依頼するメリット
弁護士は、契約を巡るトラブルが発生したときに、交渉や裁判を通じて解決を図る専門家です。
弁護士は、どのようなトラブルが起こりがちか、裁判になった場合にどうなるかをイメージしながら、リスクについて助言することができます。
トラブルを予防するためには、紛争解決のプロフェッショナルである弁護士のアドバイスを受けながら、契約書を作成することが大切なのです。
しっかりした契約書を作成せずにトラブルが起きてしまうと、後から弁護士に相談しても、リカバリーできることは限られてしまいます。
ひな形をそのまま使用するリスク
市販の本に書かれてあるひな形やインターネットで拾ったひな形を使って契約書を作成したり、他の取引先と結んだ契約書をそのまま流用するケースを見かけます。しかしながら、そのひな形や過去に使用した契約書が、契約したい内容や取引の実態に合致しているとは限りません。
実際にあった例ですが、外注先、業務委託先からの情報漏洩を防ぐために、外注先や業務委託先と「秘密保持契約書」を結びたいと考え、担当者が、インターネットで「秘密保持契約書 ひな形」と検索してひな形を見つけ、内容をよく読まずにそのまま印刷し、外注先に、印刷した「秘密保持契約書」を渡しました。しかしながら、「秘密保持契約書」に書かれている内容をよく読んでみると、それは、M&A(合併・買収)交渉の準備段階で結ぶ秘密保持契約(NDA)のひな形でした。担当者が引っ張ってきたひな形は、M&A(合併・買収)交渉の準備段階で結ぶためのものであり、外注先、業務委託先からの情報漏洩を防いだりトラブルを解決したりするためのものとしては不十分な内容だったのです。 契約書は個々の取引内容を踏まえた内容にする必要があります。新規の顧客と取引を始める場合、既存の顧客と契約書を取り交わしていなかったけれども、今後はきちんとした契約書を取り交わして取引を行うようにしたいといった場合には、弁護士に相談し、契約書の作成から依頼することをおすすめします。

弁護士(岐阜県弁護士会)
愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学卒業後、日本放送協会に入局し番組制作・取材に従事。同局退職後、東洋大法科大学院を経て弁護士に。
以来、離婚・男女問題、企業法務を中心に、地域密着の弁護士として活動しています。多治見さかえ法律事務所では、開業以来、男性の親権獲得ケースも複数関わっています。
岐阜県弁護士会の子どもの人権センターに所属し、児童虐待やいじめといった、子どもの権利に関する活動に積極的に携わっています。
令和4年から多治見市子どもの権利擁護委員を務めています(令和5年度は同代表委員)。岐阜県内の県立高校のいじめ重大事態の第三者委員会の委員に選ばれ、重大事態の調査を行うこともあります。