家族にバレずに認知ことは難しく、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を取得した際に発覚することが多いです。認知によって養育費の支払い義務や子どもの相続権が発生し、家族間でトラブルになるリスクがあります。また、妻に認知がバレると夫に対して不貞行為を理由に離婚や慰謝料請求の可能性もあります。リスクを回避し適切に対応するためには、認知の事案の取り扱い経験が豊富な弁護士に早めに相談することをお勧めします。

認知はいずれバレる

家族にバレずに認知する方法はないかと、聞かれることがあります。

しかしながら、認知すれば、いずれは家族に知られてしまうと思った方が良いでしょう。

それなら、認知を拒否したいと思っても、子どもの母親や子ども本人から認知を求められた場合に、認知を回避することは難しいです。家庭裁判所に認知調停を申し立てられ、それが不成立に終わっても、認知の訴え(民法787条人事訴訟法2条2号)を提起されれば、裁判所の判断で強制的に認知させられてしまうからです。

認知が発覚するのはどういう場面か

具体的にどういう場面で、認知したことが家族に知られてしまうのでしょうか。

多くは、家族が戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を取得した時です。

家族がパスポートの発給を申請する時、妻が自分の親等の相続手続きをする時、子どもが結婚する時、家族が国家資格を登録する時などに戸籍謄本を取得することから、その際に発覚することが多いです。

認知すると、父親と子どもそれぞれの戸籍の身分事項欄に、認知に関する事項が記載されます(戸籍法施行規則35条2号)。父親の戸籍には、認知日、認知した子どもの氏名、認知した子どもの戸籍(本籍地・筆頭者=子どもの母親の氏名)が載ります。

認知に関する事項が戸籍に載ったからといって、直ちに家族に知られるわけではありません。しかしながら、前述のとおり、家族が戸籍謄本を取得し、あなたの身分事項の欄に認知の記載があることに気付くと、認知したことが発覚してしまいます。

その他にも、認知した子どもやその母親との間で養育費をめぐるトラブルが発生することで、認知が発覚することあります。

転籍しても、いずれ認知はバレる

転籍、つまり、本籍地を変えることで、認知を隠そうと試みる人がいます。

確かに、転籍をすれば、転籍後の新しい戸籍に、認知の事実は載りません。しかし、転籍前の戸籍に認知の事実が記載されていることに変わりはないのです。

ですから、あなたが死亡した後、相続人が相続手続のために、あなたの戸籍を取得した時に、発覚してしまうことになります。

後述のとおり、家族としては、あなたが生きている時に認知の事実を知るよりも、死亡した後に認知の事実を知った方が、多大な迷惑となるのです。

妻に認知がバレたらどうなるか

夫が他の女性との間にできた子どもを認知するということは、夫が妻以外の女性と性行為をして妊娠させ、子どもが誕生したという事実が存在します。

妻にその事実が発覚すれば、夫に対して不貞行為を理由に離婚や慰謝料の支払いを求めるだけでなく、子どもの母親である女性に対しても、不貞行為を理由に慰謝料請求することがあります。

あなたが亡くなるとどうなるか

認知した人が亡くなって相続が発生した場合、認知した子どもは相続人となります。

ですから、遺言書がない場合、あなたの妻と子ども(妻と離婚した場合は子ども)は、認知した子どもも交えて、遺産分割協議をしなければなりません。

また、遺言書を作成していても、認知した子どもの遺留分(一定の相続人に認められた、最低限の遺産をもらえる権利)を侵害しているとして、認知した子どもの側から、あなたの妻と子どもに対して、侵害額の支払いを請求されるリスクがあります。

このように、あなたと認知した子どもとの関係だけでなく、妻と子ども(妻と離婚した場合は子ども)と認知した子どもとの関係で、様々な問題が発生する可能性があるのです。

認知をした後で養育費を請求されることも

認知をすると、認知をした子どもの側から養育費の支払いを求められることもあります。

話し合いでまとまらなければ、家庭裁判所に養育費調停を申し立てられ、調停でもまとまらなければ、審判に移行し、裁判所によって金額が決められてしまうことになります。

また、今後は、法定養育費を請求される可能性もあります。離婚後の共同親権を認める改正民法が令和8年までに施行されますが、この改正では、法定養育費という制度も新設されました。改正民法の施行後は、養育費の取り決めがなされるまでの当面の間、認知の日から一定額の養育費を請求することができるようになります(新民法766条の3準用、新民法788条)。

認知する・しない、認知後の対応、認知についてはどの段階でも弁護士の助力が不可欠

認知を巡るトラブルは、妻以外の女性と性的関係を持たなかったり、性的関係を持ったとしても、避妊をしていれば、起きないはずです。

しかしながら、妻以外の女性と性的関係を持ち、妊娠させてしまった場合には、その女性との交渉を通じて、認知や、認知によって生じるリスクを回避することが重要になります。

ですから、交渉に強く、認知の事案の取り扱い経験が豊富な弁護士に、早い段階で相談することをお勧めします。

また、夫が認知したことが発覚した場合も、一人で対処するのは精神的にも困難であることから、早期に弁護士に相談することをお勧めします。