妻の親と養子縁組している「婿養子」でも、離婚だけでは養親子関係は自動的に解消されません。縁組を終わらせるには離縁手続が必要となり、当事者間での合意や家庭裁判所での調停が必要となる場合があります。離縁手続をしない限り、相続権などの法律上の権利義務は継続します。離婚・離縁の話し合いは揉めやすいため、複雑な話し合いが予想されるときは、離婚・離縁の問題に詳しい弁護士への相談をお勧めします。

結婚して夫側が妻の親と養子縁組をする場合、戦前の民法における家制度の名残で、その夫のことを「婿養子」と呼ぶ場合があります。

特に、妻が一人っ子であったり、男きょうだいがいない場合に、妻の実家を存続させるために、妻の親と養子縁組する場合があり、このような男性のことを昔の名残で「婿養子」と呼ぶことがあります。

もともと「婿養子」というのは、戦前の民法における家制度のもと、家督相続人となる男子がいない場合に婚姻と同時に夫が妻の親と養子縁組して家督相続権を婿に移すという、家制度の存続のために定められた制度でした。

今回は、いわゆる婿養子の夫が妻と離婚する場合に、注意していただきたい点についてお伝えします。

妻と離婚しただけで、婿養子の夫と妻の親との縁が切れるわけではありません

離婚は、夫婦関係を解消させる手続であり、養子との関係を解消させる手続ではありません。したがって、婿養子の夫が妻と離婚しただけでは、婿養子の夫と妻の親との養子縁組が解消されるわけではありません。婿養子の夫と妻の親との養子縁組を解消するためには、離縁の手続を行う必要があります。

離縁の手続をしない限り、婿養子の夫と妻の親との法律上の養親子関係が継続するため、妻の親が死亡した場合、婿養子の夫は相続人として、妻と同様の立場で、妻の親の遺産を相続することになります。

ですから、離婚する際に、婿養子の夫との養子縁組も解消したいという場合には、離縁の手続を忘れないようにしてください。

離縁について

養子縁組を解消する手続を離縁といいます。

当事者間で協議した結果、養子縁組を解消することについて合意ができれば、役所に離縁届を提出して、協議離縁をすることができます。

しかしながら、当事者間で合意することができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、話し合いをすることになります。

それでも、当事者間で合意することができず、調停が成立しない場合には、裁判をすることになります。この場合、法定の離縁事由である、「縁組を継続しがたい重大な事由がある」として、離縁の請求をしていくことになりますが、事情によっては、離縁が認められないこともあります。

離婚問題に精通した弁護士にご相談ください

離婚に伴い、婿養子の夫と妻の親との養子縁組の解消を希望する場合には、離婚の手続と一緒に、離縁の手続を行うことが望ましいです。しかしながら、夫婦間だけでなく、妻の親との話し合いも必要になるため、何かと揉めやすい傾向にあります。

「婿養子の夫と離婚がしたい」「自分は婿養子の夫であるが、妻と離婚したい」という場合には、離婚と離縁の問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。