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遺産を渡したくない人がいる場合にどのような準備をすべきか

「長年音信不通の子どもや縁を切った子どもに遺産を渡したくない」「借金の肩代わりなどしてきて、散々迷惑をかけられた子ども(素行不良・親不孝な子ども)に遺産を渡すつもりはない」「前妻・前夫との間にもうけた子どもに遺産を渡したくない」「離婚はしていないが、長年別居状態の配偶者に遺産を渡したくない」──このように考える方は決して少なくありません。では、そのような場合にどのような準備をすべきでしょうか

1. まずは遺言書の作成を

相続が開始した場合に相続人となるべき者、つまり自分が亡くなったときに自分の相続人となる人を推定相続人と呼びますが(民法892条)、その推定相続人の中に、遺産を渡したくない人が含まれている場合は、遺言書を作成することが必要になります。遺言書に、特定の人に全部相続させる、遺産分割の方法を指定する、特定の人に遺贈すると記載しておけば、遺産を渡したくない人に遺産が渡るのを封じることができます

法的に有効な遺言書がないと、相続人全員で、あなたの遺産をどのように分割するかについて協議をし、協議がまとまらない場合は、裁判所の手続(調停・裁判)で決めていくこととなります。あなたが亡くなった後、遺産を渡したくない人が、家庭裁判所で相続放棄の手続をしたり、遺産はいらないと主張して遺産を受け取らない内容の遺産分割に同意したり、自身の相続分を他人に譲渡しない限り、その人に遺産が渡ってしまうのです

遺言書は自筆で作成することもできますが、有効性や正確性を担保するため、公証役場で公正証書遺言を作成することをお勧めします

2. 遺留分の問題にどのように対応するか

遺言書を作成して、遺産を渡したくない人に遺産が渡らないようにしたとしても、遺留分の問題が発生します

遺留分とは、法定相続人に法律上保障された「最低限の取り分」のことです(民法1042条)。遺言書で、その人に遺産を一切取得させないようにしたとしても、遺留分を侵害されたとして、侵害された額に相当する金銭の支払いを請求されてしまう場合があります(遺留分侵害額請求)。

もっとも、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言書を作成して兄弟姉妹を相続から外すことで、あなたの思いを実現することができます。

他方で、子どもや配偶者には遺留分があるため、遺産を完全に渡さないようにするのは難しいです。子どもや配偶者から遺留分侵害額請求をされた場合、最低限の金銭を支払う義務が生じるため、これを見越した遺言書を作成することが必要になります。

 相続案件の経験が豊富な弁護士は、遺留分侵害額請求の交渉、調停、訴訟の経験を踏まえ、どのような紛争が生じ得るかを見据えて、紛争が生じにくい内容の遺言書を提案することが可能です。ですから、遺言書の作成については、弁護士に相談、依頼することをお勧めします

. 推定相続人の廃除とは?

推定相続人の廃除とは、勘当の風習に由来する制度で、財産を残す側が、家庭裁判所に申し立てて、特定の推定相続人の相続権そのものを失わせる制度です。廃除が認められると、その相続人は遺留分も含めて一切の相続権を失います。

具体的には、遺留分を有する推定相続人があなたのことを虐待をしたり、重大な侮辱を加える等の著しい非行があった場合に、推定相続人の廃除の審判を家庭裁判所に申し立てることができます(民法892条)。逆に言えば、そのような事情がない限り、廃除という手続きをとって相続権を失わせることはできないのです。

廃除は、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります(家事事件手続法188条1項本文)。申立てが認められ、審判が確定した場合は、確定の日から10日内に、廃除される推定相続人の本籍地又は届出人の所在地の市区町村役所に推定相続人廃除届を出す必要があります(戸籍法97条、63条1項準用)。これにより戸籍に推定相続人廃除の事実が記載されます。

廃除が認められるためには、客観的に見て推定相続人の遺留分を否定することが正当であると判断される程度に重大なものでなければならないとされています。しかしながら、相続の権利を奪うほどの非行があったと裁判官に判断してもらうことは容易ではありません

また、廃除されても代襲相続は発生する、つまり、廃除された子どもの子ども=孫が代わりに相続人になる点についても注意が必要です

廃除の意思は、遺言書に表示することもできます。しかしながら、実際に虐待や重大な侮辱を受けた人が亡くなった後に、廃除の手続きをすることは困難を伴います。

遺言書で廃除をする場合は、遺言執行者を定め、遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所へ申し立てる必要があります(民法893条、家事事件手続法188条1項ただし書)。しかしながら、虐待・重大な侮辱の体験に関する証言といった重要な資料がない状態での申立てとなるため、遺言執行者が裁判所に疎明資料を提出するのは容易ではありません

4. その他の方法について

生前に他の親族や第三者に財産を贈与することで、遺産を減らす方法もあります

しかし、遺留分算定の基礎となりうること、遺産分割の際に特別受益の持戻しの対象となりうること、その他税務面の問題などがあります。

また、生命保険を活用し、渡したい相手を受取人に指定しておくことも考えられます

確かに、生命保険の死亡保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりません

しかしながら、控除の範囲を超えると相続税等の対象となること、保険金額が遺産総額に比べて著しく高い場合は、「特別受益」に準じて扱われたり、遺留分の算定の基礎に含まれてしまう場合があるため、注意が必要です

弁護士が様々な方法のリスク等について的確に助言できるのは、遺産分割、遺留分侵害額請求について代理人として対応できるからこそと言えます。ですから、相続については、相続案件の経験が豊富な弁護士に相談することが望ましいのです。

執筆者プロフィール

藤田聖典
藤田聖典
事例: 46件

弁護士(岐阜県弁護士会)
愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学卒業後、日本放送協会に入局し番組制作・取材に従事。同局退職後、東洋大法科大学院を経て弁護士に。
以来、離婚・男女問題、企業法務を中心に、地域密着の弁護士として活動しています。多治見さかえ法律事務所では、開業以来、男性の親権獲得ケースも複数関わっています。
岐阜県弁護士会の子どもの人権センターに所属し、児童虐待やいじめといった、子どもの権利に関する活動に積極的に携わっています。
令和4年から多治見市子どもの権利擁護委員を務めています(令和5年度は同代表委員)。岐阜県内の県立高校のいじめ重大事態の第三者委員会の委員に選ばれ、重大事態の調査を行うこともあります。

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