「身内だから」「困っているみたいだから」
そんな善意から始まる親族間の不動産の貸し借り。しかし、気軽に始めたことが何十年にもわたる深刻な親族間トラブルの火種になることがあります。今回は、親族の不動産問題で特に多い「使用貸借(無償での貸し借り)」をテーマに、具体的なトラブル事例と、なぜ専門家である弁護士への相談が必要なのかについて解説します。
まずは、どのような問題が起こりうるのか、具体的なケースを見ていきましょう。
ケース1:代替わり後も「善意」で貸した建物に居座る親戚
先代の父が、その弟(叔父)に土地建物を無償で貸していました。その後、父も叔父夫婦も亡くなりましたが、叔父の子ども(いとこ)がそのまま住み続けています。
以前は固定資産税相当額の支払いがありましたが、代替わりしてからはそれもストップ。建物の老朽化も進み、土地の有効活用を考えたいのに、いとこは出ていく気配がありません。最初の貸し借りの経緯も、今となっては誰も知りません。
ケース2:将来住みたい家に住む妹親子…円満に出ていってもらえる?
父親から相続した空き家に、離婚して地元に戻ってきた妹と、その子どもたちが住んでいます。今は職場に近いところにマンションを借りて住んでいますが、老後は、妹たちが住んでいる建物に住みたいと考えています。
妹を助けたい気持ちは山々でして、経済的に苦しそうなので賃料までは請求しようと思っていませんが、固定資産税や修繕費は自分で払ってほしいです。
また、将来、私が住みたくなった時に、妹たちにスムーズに立ち退いてもらえるか心配です。このまま何の取り決めもなく住まわせ続けるとどうなるのでしょうか。
なぜ親族間の「使用貸借」がトラブルになるのか?
親族間では、不動産を無償(タダ)で貸し借りする、使用貸借が行われることがあります。
関係が良好なうちは、あまり問題は起きません。しかし、良好な関係を前提とするが故に、いざ関係が悪化したり、代替わりをしたりした時に、深刻な問題が表面化するのです。
そして、口約束が多く、合意内容が曖昧なため、「いつまで貸すのか」「どちらが費用を負担するのか」といった点で後から揉めてしまいます。
自力での解決が難しい理由
トラブルを避けるためには、口約束ではなく、「使用貸借契約書」や「合意書」といった書面で取り決めた内容を残すことが重要です。書面があれば、当事者が亡くなった後でも、契約内容を明確に把握することができます。
しかし、すでに問題が起きている場合や、今さら「契約書を作ろう」と言い出しにくい状況では、どうすればよいのでしょうか。
1つ目のケースでは、本来、最初の借主である叔父が亡くなった時点で、契約は終了していたはずです。民法では、借主が死亡した場合、使用貸借契約が終了すると定められています。
しかし、「法律ではこうなっているから、出て行ってください。」と、親族に対して冷静に主張して交渉するのは、非常に難しいのではないでしょうか。感情的な対立となり、話し合いにすらならないということもあり得ます。
さらに、親族とはいえ、随分前から一度も会話をしたことがないなど関係性が希薄になっており、話しかけづらい場合もあるのではないでしょうか。
親族間のトラブル解決こそ弁護士に相談を
感情的になりがちな親族間の話し合いに、法律の専門家である弁護士が第三者として入ることで、冷静かつ論理的な交渉が可能になります。相手方も、専門家が出てくることで真摯に対応せざるを得なくなります。
ケース1の場合は、もし交渉が決裂してしまったら、最終的には調停や訴訟といった裁判所の手続きで解決を図ることになります。
調停や訴訟を自分だけで行うのは容易ではありません。
弁護士であれば裁判になった場合の見通しを立てた上で、交渉や調停の段階で現実的な提案をし、交渉を有利に進めることもできます。
ケース2のように、まだ深刻なトラブルになっていない段階でも、弁護士への相談は非常に有効です。「将来自分が住みたい」という希望を円満に実現するためには、どのような内容の合意書(使用貸借契約書)を、どのタイミングで交わすべきか。専門的な視点から、あなたの状況に合わせた最適なアドバイスをすることができます。
親族間の不動産をめぐるトラブルは、時間が経てば経つほど、相続等で関係者が増えてしまい、問題が複雑化していきます。「身内だから…」と一人で抱え込まず、手遅れになる前に、近くの弁護士に相談することをおすすめします。