「息子の離婚」という現実に直面し、大切な孫に会えなくなってしまうのではないか、養育費の支払い等で経済的に困窮する息子を親としてどう支えていけばいいのかと、不安になる親御さんも少なくないでしょう。
この記事では、「息子の離婚」で悩むご両親が抱えがちな問題に対し、親としてできること、そして知っておくべき法的知識と正しい対処法を、令和8年4月に施行された民法に沿って網羅的に解説します。
なぜ?離婚しない・動かない息子への苛立ちと正しい対処法
「妻からDVやモラハラの被害を受けているのに、息子が何もしようとしない。」「長年別居しているのに、一向に離婚話が進まない。」
こうした状況に、親として歯がゆさや苛立ちを感じることもあるでしょう。しかし、息子さんを責めても事態は好転しません。息子さん自身が精神的に追い詰められており、動けなくなっている可能性があるからです。
親としてすべきことは、感情的になって息子を叱咤激励することではなく、客観的な視点から解決への道筋を示してあげることだと思います。
その最善策が、離婚問題に強い弁護士への相談に繋げることです。専門家という第三者が入ることで、息子さんも冷静に自身の状況と向き合うきっかけを得られるはずです。
孫に会えない悩みは解消できる?令和8年4月施行の改正法の影響は?
息子の離婚で最も辛いことは、かわいい孫に会えなくなることかもしれません。特に、母親が単独親権者・監護権者となった場合、祖父母の交流はさらに難しくなる傾向がありました。
息子が離婚して別居した後も、かわいい孫と交流できる方法として、次の3つが挙げられます。
(1)父母以外の親族と子との交流
これまでは、祖父母が孫に会うための法的な裏付けは、残念ながら明確には認められていませんでした。
しかしながら、令和8年4月施行の改正法により、父母以外の親族と子との交流についても定めることができるようになりました(民法817条の13第1項)。
まずは、息子とその配偶者とで父母以外の親族と子との交流について協議をしてもらうことが考えられます。
もし協議が不調となったときや協議ができないときは、息子、そして一定の場合は祖父母自身が家庭裁判所に対して調停・審判を申し立てて、交流を実施するよう求めることが可能となりました(同条第2項)。
裁判所は、子の利益のため特に必要があると認めるときに限り、審判で、父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができることになったのです(同条第4項)。
もっとも、面会交流が無条件に認められるわけではなく、あくまでも子自身の心の安定や健全な成長にとって、祖父母との交流が「特に必要」だと客観的に判断された場合に限られます。
(2)親子交流への同席による交流
さらに、これまでも、息子と孫との親子交流(面会交流)に同席する形で交流することがありました。
元のお嫁さんにとって、元夫である息子さんだけで子どもを会わせることに不安を感じるケースは少なくありません。そこで、祖父母が「サポーター」として同席することで、安心して会わせてくれる可能性があります。これは、第三者の交流支援機関を利用する費用や手間を避けたいと考える当事者にとっても、受け入れやすい提案となる場合があります。また、第三者機関が近くにない場合にも、円滑な面会を実現する有効な手段として選択されることがあります。
面会交流の条件を話し合う中で、元のお嫁さんに対し、祖父母の面会交流への同席を提案できないか、息子さんと相談してみましょう。
(3)監護の期間の分掌を通じた交流
また、令和8年4月以降は、監護をどのように分掌するか(例えば平日は妻、土日は夫というような)期間の分掌について取り決めをするという方法があり、その中で祖父母が孫と交流することも考えられます。
いずれの方法も、大切なのは孫の気持ちと元のお嫁さんへの配慮です。決して感情的にならず、息子夫婦の問題に敬意を払いながら、あくまで「孫の健やかな成長を願う存在」として協力的な姿勢を示すことが重要です。
「息子の離婚」で絶対NG!養育費の肩代わりに潜む3つのリスク
経済的に苦しい息子のために、親が養育費を肩代わりする場合があります。
息子のことを心配し、可愛い孫のためにと養育費を肩代わりする気持ちはよく分かります。しかし、その愛情が、かえって深刻な事態を招いてしまうことをご存知でしょうか。
リスク1:息子の「責任感」と「自立」を奪ってしまう
親からの援助が当たり前になると、息子自身が、養育費について、「子どもの親として支払うべきお金」という自覚と責任感を失いかねません。
収入が減った、再婚して子どもができた等の事情があり、養育費の減額調停を申し立てるべき場面でも、本人が養育費を負担していないと、何もしようとせず、結果的に息子の経済的自立を妨げることになります。
リスク2:親自身の「老後破綻」に繋がる
孫が幼い時に離婚すると、養育費の支払いは10年、20年と続きます。ご自身が退職して年金生活になった後も、養育費の支払いを継続することが可能かどうか、冷静に考える必要があります。愛情ゆえの肩代わりが、ご自身の老後の生活を脅かすことになりかねません。
リスク3:安易な保証契約が招く法的義務
離婚の際に、息子の妻から養育費の保証人になるよう求められることがありますが、保証人になるのは避けるべきです。保証人になってしまうと、息子が養育費を支払えなくなったときに、親に法的な支払い義務が生じます。これは単なる「肩代わり」ではなく、法的に強制される重い責任です。
息子が借金を抱えていることが原因で保証人になるよう求められた場合には、保証人になるのではなく、弁護士に相談して「債務整理」を検討させることが、根本的な解決に繋がるでしょう。
息子の親権・監護権に関する争いで祖父母ができる重要なサポートとは?
離婚の際に、息子が、子どもの親権、監護権、親権行使者、監護の分掌を争うことになった場合、祖父母の存在が大きな力になります。
これまでは、離婚時は単独親権しか選択することができず、どちらが親権者として適切か、親権をめぐる激しい争いがありました。
もちろん、民法改正後も、激しく争われる余地があります。
例えば、民法改正により共同親権も選択することが可能となりますが、別居後や離婚後に子どもが父母のどちらと一緒に住んで生活するかについて紛争が生じることが考えられます。
子どもが父母のどちらと一緒に住んで生活するかは、親権の中の子の身上監護権のうちの居所指定権の問題であり、共同親権の場合は父母が共同して行使する必要があり、協議で解決できない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てて解決を図る必要があります。
具体的には、第1に、子の居所指定権に関して親権を行使する者を決定するよう求める、居所の決定に係る親権行使者指定の申立て、第2に、子の居所指定権を含む身上監護権について自らを監護者に指定するよう求める監護者指定の申立て、第3に、監護の分掌を定める申立ての3種類の申立てがあります。
さらに、監護の分掌の中でも、例えば平日は母が監護し、土日は父が監護するというように、監護の期間の分掌について取り決めをするという方法も考えられます。
どの申立てが適切かについては、それぞれのケース、状況に応じて判断する必要がありますので、弁護士と相談しておくことが望ましいです。
裁判所は、民法改正前も、どちらの親と暮らすことが「子の利益」に繋がるかを重視して判断していましたが、共同親権が選択可能となった後も、子の居所指定に関する親権行使者の指定や監護権をめぐる紛争においても、同様に判断することが見込まれます。
どちらの親と暮らすことが「子の利益」に繋がるか、その際は、親の監護能力を補う「監護補助者」の存在も考慮要素となります。
祖父母として、「孫の日々の送迎を手伝える」「孫が病気になった時に看病できる」「息子と孫に安定した住環境を提供できる」など、具体的なサポート体制を明確に示せるように準備しておくことが、息子にとって何より心強い支援となります。
また、離婚後も夫婦が互いに子の親権をもつ、共同親権を目指す場合、元妻のことを一定程度尊重する姿勢も大切です。祖父母が息子と一緒になって、相手方に対する非難を繰り返したり、親権の共同行使のために必要な最低限の意思疎通も難しいとなると、単独親権が好ましいという判断につながってしまう場合もあります。監護の期間の分掌を目指す場合でも、父母が緊密に協力できるかどうかが問題となり、相手方の非難を繰り返していると、結局認められないという結果になってしまう可能性もあります。
まとめ
「息子の離婚」は、ご家族全員にとって非常に大きな問題です。しかし、親が問題を背負い込み、感情的に動いてしまっては、解決は遠のくばかりです。
親としてできる最大のサポートは、冷静に、そして戦略的に問題解決へと導くことです。そのためには、離婚問題のプロである弁護士への相談が不可欠であるということをお伝えさせていただきます。