離婚時、親権は一般的に母親が優位に立ちますが、父親が親権を獲得した事例もあります。親権者を決める際、子供の福祉や継続性の原則が重視され、母親が主に子供を監護している場合が多いため、母親が親権者となることが多いですが父親が親権を獲得する場合、監護養育に積極的であることや、母親に虐待や精神的問題がある場合がポイントとなるため、弁護士のサポートが重要になります。
親権者を決める必要性
一般に、夫婦に未成年の子供がいる場合、どちらが親権者となるかを決めないと離婚することができません。
調停離婚では、女性側が親権者となるケースが大半です。
令和元年度の全国の家庭裁判所で成立した離婚調停又は調停に代わる審判事件のうち「子の親権者の定め」をすべき件数は、18580件でした(令和元年度司法統計)。父が親権者と定められたのは、そのうちの僅か1727件であり、全体の僅か9%程度です。残りの9割超は母が親権者となっています。
このように、女性側が親権者となるケースが大半ですが、多治見さかえ法律事務所の弁護士は、男性側の代理人となって男性側が親権を獲得したという事例も扱っております。
女性側が親権者となる理由
そもそも女性側が親権者となるケースが多いのはなぜでしょうか。
親権争いとなった場合、どちらが親権者となった方が子どもの福祉の点で望ましいか、様々な事情を考慮して、親権者を決めていきます。
①継続性の原則が重視されるから
その際、特に重視されるのが、監護の継続性維持の原則です。
子どもが父母どちらか一方の下で一定期間以上平穏に生活している場合、現状を尊重すべきと考えられます。
主に誰が子どもの監護や教育にかかわってきたのかがポイントとなります。
母親が親権者となるケースが大半となるのは、多くの家庭で、子供の監護を主に担っているのが母であることが多いからです。
②その他に重視される考慮要素
子の意思の尊重も、小学校高学年など一定の年齢以上となるとある程度考慮されます。
離婚訴訟では、15歳以上の子については、親権者の指定に先立ち子の意見聴取が必要です。
きょうだいの親権者が別々となることは原則として避けるべきだとされています(きょうだい不分離の原則)。
親権者になった場合に非親権者と子の面会交流を認める意向を示していることも考慮要素の一つとなります(面会交流に対する寛容性重視の原則)。
どちらが親権者として適格かを判断する上では、監護の意欲や能力、健康状態、性格、子に対する愛情、監護養育を補助する人(監護補助者)の存在も重要な考慮要素となります。
③経済力はあまり重視されない
経済力については、養育費や公的支援でカバーできるともいえ、そこまで大きな考慮要素とはなりません。
親権争いに弁護士が必要な理由
親権や面会交流が大きな争点となる場合、調停の段階で家庭裁判所調査官が関与する場合も多く、調停中や訴訟中に家庭裁判所調査官による調査が行われる場合があります。
家庭裁判所の調査官の調査では、監護の現状が子どもの福祉に沿うものか、子どもの意向はどうか、それぞれについて親権者として適格かという観点から調査が行われます。
親権者の適格性を立証するため、子の監護に関する陳述書の作成を求められる場合もあります。親の生活状況、経済状況、子の生活状況、監護方針を書くものとなります。
女性、男性いずれの側でも、親権争いとなる場合、調停や訴訟で、どちらが親権者として適格であるのかを主張・立証する必要がありますし、調査官調査への対応や書類・資料の作成が大きな負担となる場合もあります。
ですから、親権争いとなる場合は、弁護士にご依頼することをおすすめします。
男性が親権者となった事例
多治見さかえ法律事務所の弁護士は、訴訟、調停、協議、それぞれの段階で、男性が親権者となった事例を扱っています。
例えば、離婚訴訟で父が子どもたちの親権者となることで決着した事案では、別居前から父が子どもの監護や教育に積極的にかかわってきた、きょうだいのうちの乳児1人を除き父が引き続き監護養育しており監護養育に特に問題がない、別居前に母に子どもたちのうちの一人に対する身体的虐待が疑われる行為がありそれが別居のきっかけとなった、父が親権者となった場合に母と子どもたちの面会交流に積極的である、というのがポイントとなりました。
父が子どもの親権を獲得する形で協議離婚や調停離婚が成立した事案では、別居前に妻が子どもに心理的虐待をし、これに耐えきれず避難したといった事情や、別居前から父が子どもの監護や教育に積極的にかかわってきた、アルコール依存など母の心身の状態に問題があった、子どもも父が親権者となることを希望している、というのがポイントとなりました。
このように、父親が親権者となる事案については、別居前から父が監護養育に積極的にかかわっていること、現在も継続して父が子どもを監護・養育していること、祖父母など父の監護を補助する者がいることが共通して見られ、中には、母の子に対する児童虐待が疑われるものもあります。
まとめ
親権争いが予測される場合には、離婚や別居を考え始めた段階など、できる限り早い段階で、離婚(さらには児童虐待問題)に詳しい弁護士に相談をしましょう。
多治見さかえ法律事務所では、経験豊富な弁護士が、離婚や親権争いを親身になってサポートします。
弁護士(岐阜県弁護士会)
愛知県立旭丘高校・慶應義塾大学卒業後、日本放送協会に入局し番組制作・取材に従事。同局退職後、東洋大法科大学院を経て弁護士に。
以来、離婚・男女問題、企業法務を中心に、地域密着の弁護士として活動しています。多治見さかえ法律事務所では、開業以来、男性の親権獲得ケースも複数関わっています。
岐阜県弁護士会の子どもの人権センターに所属し、児童虐待やいじめといった、子どもの権利に関する活動に積極的に携わっています。
令和4年から多治見市子どもの権利擁護委員を務めています(令和5年度は同代表委員)。岐阜県内の県立高校のいじめ重大事態の第三者委員会の委員に選ばれ、重大事態の調査を行うこともあります。