不動産を含む相続・遺産分割では、誰が不動産を受け継ぐか、誰も受け継がない場合にどのように売却して代金を分けるかについて考える必要があります。
1 相続する不動産を調べる方法
相続の手続は、亡くなった方の財産を確認するところから始まります。
不動産については、名寄帳や所有不動産記録証明制度が手がかりとなります。
(1)名寄帳で確認する
名寄帳(多治見市では「名寄帳兼課税台帳」)は、その市町村内の土地・家屋を納税義務者ごとにまとめた台帳であり、土地・家屋の評価額などを確認できます。しかし、この台帳に載っているのは、その市町村にある土地・家屋に限られ、他の市町村にも不動産がある場合は、市町村ごとに調べる必要があります。
(2)所有不動産記録証明制度を利用する
また、所有不動産記録証明制度が2026年2月に始まりました。氏名・住所を検索条件として、全国の登記記録から所有者として記録されている不動産を一覧で確認できるものであり、相続人も請求することができます。これにより、離れた地域にある不動産や、家族が把握していなかった不動産を探すことができます。ただし、未登記の建物や、登記上の氏名・住所が検索条件と一致しない不動産については確認できない場合があるので、注意が必要です。
2 相続登記の義務化と不動産の分け方
(1)相続登記の期限に注意する
亡くなった親の不動産を調べてみると、親の土地だと思っていた不動産が、祖父母の名義のままだったということがあります。
2024年4月から相続登記が義務化されています。原則として、相続による所有権の取得を知った日から3年以内に申請することが必要です。改正法施行前から相続したことを知っている未登記の不動産も対象となり、原則として2027年3月31日までに登記手続きを行う必要があります。
(2)不動産を引き継ぐか、売却するか
不動産を含む遺産の分け方は、一つではありません。
不動産に住み続けたい相続人がいる場合は、その相続人が不動産を取得し、不動産の評価額を踏まえて、預貯金の配分や他の相続人への支払いを調整します。
一方で、誰も不動産に住む予定がない場合や不動産の取得を希望する人がいない場合は、不動産を売却して代金を分配する方法が考えられます。
相続人同士で話し合いをして解決を図ることが難しい場合は、弁護士に依頼して、交渉や調停・審判手続を経て解決を図ることが考えられますが、不動産の分け方を決める前に、不動産の価格や売却の見通しについて確認しておくことをお勧めします。
3 多治見市の不動産事情と売却の難しさ
(1)不動産価格はエリアによって異なる
多治見市の不動産はエリアによって事情が異なり、需要が旺盛で不動産を売却しやすい地域と、需要が低調で売却が難しい地域があります。
多治見駅周辺では、住宅地・商業地の価格上昇が続いています。多治見駅は、名古屋駅からJR中央線の快速電車で約40分と名古屋方面への通勤にも便利な立地で、特急列車も停車します。
2026年の岐阜県地価調査では、駅に近い音羽町の住宅地が前年比3.8%上昇し、県内の住宅地で最も高い上昇率となりました。当事務所が売却に携わる中でも、多治見駅周辺や比較的新しい住宅地の中古物件には価格上昇の動きがみられます。一方、多治見市の周縁部にあるバブル期までに開発された住宅地など価格の下落が続く地域もあり、エリアによっては買い手を見つけること自体が難しい場合があります。
(2)買い手が見つからない場合の対応
誰も住む予定がなく、取得を希望する人がいない場合に、不動産をどうするのか。
不動産需要が低調で不動産の売却が難しい地域や、地目が宅地以外の場合は、相続人同士で不動産の押し付け合いになることもあります。相続人の誰かが引き受ける方向で調整することができない場合は、近隣の方に買い取りを打診したり、解体費用や登記費用を負担する等して、引き取ってもらうための条件について交渉することもあります。
4 生前整理や実家じまいは、売却と遺言を一緒に考えましょう
(1)引き継ぐ人の希望や負担を確認する
「子どもに実家を残したい」と思っていても、子どもに別の住まいや生活があると、実家が管理や処分の負担になることがあります。そのため、自分が生きている間に実家じまいをし、負の財産(負動産)を承継させたくないという思いで、動く人もいます。
まずは、所有する不動産について、家族に引き継ぐ希望があるかを確認しましょう。そのうえで、保有する不動産と、生前に売却する不動産を整理します。
遺言を考える際も、「誰に残すか」だけでは十分ではありません。その人が引き継ぎたいか、管理できるかまで考えることが大切です。
不動産を取得する人と、預貯金を取得する人の配分も検討します。売却して代金を分ける方針であれば、その実現方法まで考えておく必要があります。
(2)公正証書遺言と遺言執行者の活用
当事務所では、こうした方針の整理から、公正証書遺言の文案作成まで対応しています。弁護士が遺言執行者に就任して、相続発生後に遺言の内容を実現するための手続を担うことも可能です。
(3)生前に売却するという選択肢
不動産を売却して代金を分けるのであれば、生前に売却を進め、現金を増やしておくことも考えられます。亡くなった後に売却するという内容の遺言を作成しても、すぐに買い手が見つからず、迅速な遺言の執行が難しくなる場合もあるからです。
5 不動産を含む相続は地域の事情に詳しい弁護士に相談を
不動産を含む案件では、法律の知識だけでなく、その地域の実情や市況を踏まえた助言と売却の実現が必要となります。そのため、不動産を含む相続案件については、その地域や土地の事情に詳しく、実績のある地元の不動産業者と連携できる弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所の弁護士は、相続・離婚、相続財産清算人として不動産売却に携わった経験があります。多治見市を中心に東濃地方で多くの経験を重ねており、相続や売買に伴う登記は司法書士と連携して進めることができます。遠方にお住まいの方にも対応しており、ご依頼いただいた後はメールを中心に、必要に応じて電話でやり取りしています。
実家や土地の相続について検討したい方、将来に備えて財産を整理したい方、遺言の作成をしたい方は、多治見さかえ法律事務所にご相談ください。